カミングアウト

悪循環からの解放

 FD(会食恐怖症)は、単純化すると、人と一緒に食事する際、「また食べられないのではないか」、「同席者に不審に思われるのではないか」という不安を感じることがきっかけで起こる症状といえるでしょうか。そうした体験の長年にわたる繰り返しがほとんど条件反射として心身に刷り込まれ、抜け出せなくなっている状態のように感じます。

 

 この悪循環から自分を解放するためには、小さな成功体験を積み重ねるとか、自分なりのチャレンジを行い、克服することで少しずつ自信を獲得するとか、環境を変えてみるとか、前向きに考えながら少しずつ進んでいく必要があるでしょう。その合間には大きな失敗があったりするので、三歩進んで二歩さがるのはまだしも、一歩進んで二歩下がったりしますけれども。

 

 そしてもうひとつ、環境を劇的に変える方法のひとつが、自分がFDであることをあらかじめ人に伝える(カミングアウトする)ことではないでしょうか。

言うは易く行うは難し

 しかしカミングアウトは、言うは易く行うは難し、心理的に難しいのみならず、カミングアウトしたことによる影響も考慮せざるを得ないので、非常にハードルが高いと言えるでしょう。私自身、「恋愛・結婚」のページにも書きましたが、自分の症状を具体的に説明したことがあるのは妻とその両親のみですから、偉そうなことは一切言えません。

 相手が家族であれば、不要な心配を与えるかもしれない。友人であれば、それまで全く気遣いが不要だった関係に何らかの遠慮を生じさせてしまうかもしれないし、変な噂になっても困る。恋人候補?であれば嫌われてしまうかもしれない。職場の同僚や上司にはとても言い出せないし、言ったら言ったで変な目で見られるのは嫌だ。仕事を変えられてしまうかもしれない…などなど、不安は尽きないでしょう。

カミングアウトすべきか否か

 カミングアウトすべきか否か、これはケースバイケースでしょうし、その結果について責任が持てるのは自分だけです。一般論として言えるのは、「信頼関係を壊す可能性があるのなら、思い切ってカミングアウトする方がいい場合もあるのではないか」、ということくらいでしょうか(答えになっていませんね)。

 

 個人的には、少なくとも人生の真のパートナーには、カミングアウトすることなしにまともな関係は築くことができないと思います。反対に、事実を知らせることで去っていくような人と人生をともに歩むのは、残念ですが難しいでしょう。事実を知っているパートナーを得ることは、今後の症状の改善という意味でも、非常に大きな意味を持ちます。

 

 職場での対応については、どの程度仕事に支障があるかによって判断せざるを得ないと思います。極端な話、たとえば重役の秘書として昼食を常に共にするような仕事は事実上無理なので、理由を説明せざるを得ないかもしれません。私自身は、いろいろ失敗しながらもやって行けているし(今のところは、ですが)、若い頃に比べると多少なりとも症状が軽くなってきているので、あえてカミングアウトする必要性を今は感じていません。

 

 皆さんは、どうお考えですか。また、カミングアウトされたご経験をお持ちですか。

 

経験談をお寄せください。