症状

典型的な症状

 人前で食事ができない、他人といっしょにご飯が食べられない、レストランなどでの外食ができない、というのがFD(会食恐怖症)の主な症状だと思います。

 私の場合は時と場合によりさまざまで、正確に説明するのは少し難しい印象がありますが、典型的な例でいうと、例えばこんな感じです。 状況によって、反応が軽い時と、どうしてもダメな時があります。

 

  • 心臓がどきどきする。なんとなく息苦しいような気がする。
  • 不安感で気持ちが落ち着かない。そわそわしてしまう。
  • 食べ物の匂いが不快に感じる。
  • 食事を口に入れようとしても、入れられない。
  • 口が渇いて、食べ物がのどを通らない。
  • 無理に口に入れたものの、味がした途端に吐き出したくなり、口に入れたまま動けなくなる。
  • 食べ物が目の前にある間、周囲の視線が気になる。
  • 途中まで何とか食べられても、同席者が食べ終わると急に不安になり、その後食べられない。
  • 食事が下げられると、何事もなかったかのように不安が消え、空腹感を覚えたりする。 

 

「食べられなくなる」ことがあるケース

大雑把にいうと、「人といっしょに食事ができない」「外食が苦手」、というのがFDの症状ですが、症状が出るのには、いくつかの条件があります。 私の場合を列挙してみました。

 

  •   家族や親しい友人以外の人と一緒に外食する場合  (反対に、まったく初対面なら大丈夫だったりもする)
  •   決められた量を食べる必要がある場合 (特に、定食系が苦手)
  •   決められた量を、限られた時間内で食べる必要がある場合 
  •   一人当たりの量が多い場合 
  •   慣れない場所で食事する場合  (どんな雰囲気の店か、どんなメニューか、知らないと不安)
  •   厨房の匂いなどから給食を連想してしまった場合
  •   友人、親戚の家など、「残すと失礼に当たる」場合
  •   個人経営の店など、「作ってくれた人の顔が見える」規模の店で食事する場合  (つくってくれた人の期待に応えなければ、という不安と焦り)
  •   上司などに「おごられる」場合  (これも「残すと失礼に当たる」系)
  •   カウンター席での食事。寿司屋(回転寿司を除く。おいしそうに食べているかどうか見られるかも知れない)
  •   頼んだあと、なかなか食事が運ばれてこない場合 (頑張れそうだったのに、時間がたつにつれ不安になってくる)
  •   人よりあとに食事が運ばれてきた場合 (出遅れた!早く食べなければ!)
  •   店員が無愛想・威圧的な場合
  •   食事中、「あまり食べないね」と指摘された場合 (やはりバレたか。早く食べないとまた言われるかも)
  •   食事中、食べるのが早い人や、たくさん食べる人をからかうような会話になった場合 (早くたくさん食べられる人が羨ましい。それに比べて自分は、と思われるかな)
  •   食事のメンバーに同年代の女性が含まれる場合  (もう最近はありませんが、女性にかっこ悪いところを見られたくないというプレッシャーでしょうか。 たくさん食べるのが男らしいとされるし。) 
  •   集団での食事の場合、自分の両側に人が座った場合   (ガードが利かない)

 

…などなど。書いていて、よくもまあ、生きにくい人生だなあと、われながらつい苦笑いしてしまいました。

 

 最近はだいぶ軽減されましたが、こうした条件が組み合わさった時、急に「スイッチ」が入ったようになり、まったく食べられなくなることがあります。実際にこうした場面に直面する前であっても、食事に行く前に予期してしまい、不安が頭をもたげることもあります。一度そうなってしまうと、途中でリカバリーすることは難しく、もはやどうにもならないことがほとんどです。

 

 一時期、心療内科を受診し、処方された抗不安薬を頓服的に服用したことがありましたが、あらかじめの不安は多少軽減するものの、食事の場面での劇的な効果は期待できませんでした。むしろ眠気の副作用がきついので、よほどの場合を除き使うことはあまりありませんでした。

   

「食べられる」ことが多いケース

反対に、食べられることが多いのは、以下のような場合ですね。

 

  • 飲み会など、個人の食べる量がはっきりしておらず、時間も明確に限られていない場合
  • 飲み会など、アルコールがメインとなり、食べ残す人が多い場合  
  • バイキングなど、自分で食べるものや量を決定できる場合
  • 立食パーティー
  • BBQなど屋外での食事
  • 家族、親しい友人との食事
  • 弁当
  • ファミリーレストランやファーストフードなど、アルバイトがマニュアルどおりに料理をつくっているような場所

 

これもまた、ケースバイケースです。たとえ家族と一緒であっても、レストランの雰囲気で急に駄目になり、入口で引き返すこともあります。

   

他人の目が気になる?

 こうして改めて見てみると、やはり給食の体験が根本にあるようで、私は「食べなければいけない」「食べなければ相手に悪い」というプレッシャーを感じる場面が苦手なのですね。あとは、意識していませんが、「何で食べないのだろう」と他人に思われたくないという深層心理でしょう。給食を食べるのが遅くて皆の視線を浴びた時の感覚に近いでしょうか。実際には、誰もそんな事など気にしていないのですが、無意識のうちに、必要以上に周囲を意識してしまうのがFDだというわけです。

 

 ところで、「他人の目が気になる」といっても、私の場合、それがまったく「食事の時に限る」のです。

 それがある意味、この症状の厄介なところでもあるのですが、自分の場合、他人と話をするのは好きですし、人前で発表したりすることにもさほど苦痛を感じません。「子育て」に関するシンポジウムのパネラーとして、壇上で話をしたことも、むしろ楽しめました。

  「会食」や「外食」の時にのみこの症状が表れるのですが、夜の会の時は上記のようにあまり問題が出ませんし、昼は弁当でしのぐなどしてきたので、私がFDであるということを知っている同僚や友人は、全くいないのが現状です。

 

 そういう意味では「重症」ではないのかもしれませんが、自分では、なるべく人と同じ生活ができるよう、意識して同僚との食事にチャレンジするなど、自分なりの努力は続けてきたつもりです。感覚的に、引きこもったら最後、この症状はきっと悪化するだろうと思っているからです。

 

 それでも年に数回、しばらく落ち込んでしまうような失敗をしてしまう、というのが実態ですが。

経験談をお寄せください。